2014年5月5日月曜日

カセットガスの詰め替えに関する法的検討

ガスのまとめは危ない行為なので、法的のどうなのかということを調べてみました。

Webサイトやブログなどを見ていると、「高圧ガス保安法に抵触する」と書かれていたりします。
やはり違法なことならやってはいけないので、きちんと調べてみました。

Webサイト記載の例

【明解要解】ガス再充填器具ネットで販売 保安院、「危険」と自粛要請+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

この記事から引用すると
 こうした中で、保安院は「接続器具を持っている人は使用をやめてほしい」と呼びかけているが、「(器具の自作、販売は)法規制の対象外なので、個人をひとりずつ取り締まることもできない…」と頭を抱えているのが現状だ。
だそうだが、これをした行為が法規制の対象ならば「個人をひとりずつ取り締まることもできない」と悩むこともないはずなのだが。


関係法令

高圧ガス保安法について

高圧ガス保安法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO204.html

この法律によると
ブタンガスも、寒冷地仕様のイソブタンガスも高圧ガス保安法2条3号
三  常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
に該当します。

そして、充填については
(充てん)
第四十八条第3項
3  高圧ガスを充てんした再充てん禁止容器及び高圧ガスを充てんして輸入された再充てん禁止容器には、再度高圧ガスを充てんしてはならない

第八十一条  次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三  第十六条第一項、第二十条第一項若しくは第三項、第二十七条の二第一項、第三項若しくは第四項、第二十七条の三第一項若しくは第二項、第二十七条の四第一項、第二十八条第一項、第三十三条第一項、第四十八条第一項から第四項まで、第五十一条第一項又は第五十二条第一項の規定に違反した者

なので、高圧ガス保安法の適用があれば、罰則付きの違法行為なので、取り締まることはできます。

先の記事にあったように
「「個人をひとりずつ取り締まることもできない」と悩むこと」が全く理解できません。

高圧ガス保安法の適用除外について

高圧ガス保安法第3条に適用除外が規定されていて
(適用除外)
第三条  この法律の規定は、次の各号に掲げる高圧ガスについては、適用しない
八  その他災害の発生のおそれがない高圧ガスであつて、政令で定めるもの
となっています。
で「政令で定めるもの。」
については、こんな説明がありました。


高圧ガス保安法の適用除外 - その他(法律) - 教えて!goo

家庭用カセットコンロで使うカセットボンベは高圧ガス保安法の適用除外と聞いたのですが、具体的には法令のどこにそのような記載がされているのですか?
という質問の回答で示されている「関係告示」を探してみると



高圧ガス保安法施行令関係告示(平成九年通商産業省告示第百三十九号)
  平成23年7月15日付けの改正内容(平成23年経済産業省告示第167号)
が見つかりました。

カセットガスでは、「容器として使用されたことのない」もの(すなわち未使用の容器)への充填は適用除外で、再充填されたものは高圧ガス保安法の適用があるようになってます。
(高圧ガス保安法施行令関係告示第4条第3号ト)


さらに、2007年に原子力安全・保安院からこんな注意喚起も

簡易な液化ガス容器への再充てん禁止に係る注意喚起

 禁止された行為で、関係法令が参考に示されているのに、罰則規定が記載されていない歯切れの悪さ・・・。


映画を観に行くと強制的に見せられる
 NO MORE 映画泥棒
の宣伝のように
六月以下の懲役、または五十万円以下の罰金。若しくは、その両方が科せられます。
と堂々と書けばいいのに不思議だ。そう書かない理由は何なのだ。と考えてしまいます。

 そして、詰め替え器具の製造、販売は高圧ガス保安法に直接の規定はないが、それを使う行為が明らかに違法(犯罪)であるならば、これだけ明らかにその行為専用品なのだから幇助行為として取り締まることも可能なはず(正犯を摘発してからですけど)。

結局のところ

ここで、関係法令を関係告示まであわせて解釈すると、
要するに、カセットガスの場合、
  • 新品のガス缶に入れたガスは、高圧ガス保安法の適用除外
  • 使用したことのガス缶に入れたガスは、高圧ガス保安法の適用あり

よくよく考えてみるに、

 新品のガス缶に入っているガス(普通に購入したガス)は、高圧ガス保安法の適用除外なのだから、「この適用除外されたガス」を他の容器に再充填する時には、高圧ガス保安法の適用はないことになるのではないだろうか。

 これでは、ガスの詰め替え行為を摘発するのは厳しいだろう。

これが一番最初に挙げたWebサイト記載の
 こうした中で、保安院は「接続器具を持っている人は使用をやめてほしい」と呼びかけているが、「(器具の自作、販売は)法規制の対象外なので、個人をひとりずつ取り締まることもできない…」と頭を抱えているのが現状だ。
の理由ではないだろうか。。。
 そりゃぁ、この規定では取り締まることもできないわなぁ。

結局、法令、規則の不備

ちなみに

詰め替えた容器に入ったガスは、高圧ガス保安法の適用がある。
だけれども詰め替えたガスを、高圧ガス保安法に基いて適切に使用する限りは問題ない。
もちろん、詰め替えた容器に入ったガスをもう一度詰め替えることは、間違えなく違法だ。

当然だけれども、ガスの詰め替えという行為が危険なことには変わりなく推奨されることではない


 もし、詰め替えたガス缶からさらに別のガス缶に詰め替え中(間違いなく高圧ガス保安法違反)に火災を発生させたりしたら、どうなるのか。

 この場合も、
 高圧ガス保安法違反と刑法上の重失火罪の観念的競合となるので、罪が重い重失火罪(3年以下の懲役又は150万円以下の罰金)がされるので、高圧ガス保安法違反で裁かられることはないだろう。

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