鼻洗浄に使う生理食塩水について、調べたのでまとめ。特に、「脳を食べるアメーバ」として知られるネグレリア・フォーレリの存在は知っていましたが、それ以外にも怖いものを知り、その恐ろしさに身が引き締まる思いでした。
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Pathogenic Amoeba keep away |
恐るべき「脳を食べるアメーバ」ネグレリア・フォーレリ
ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)は、温かい淡水に生息するアメーバです。このアメーバが鼻から体内に侵入すると、**原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)**という致死的な脳の感染症を引き起こします。PAMは進行が非常に速く、発症からわずか数日で死に至ることも少なくありません。致死率はなんと99%とも言われています。
主に、湖、川、温泉、そして適切に塩素消毒されていないプールなどで見つかる可能性があります。
そして、日本でも感染例は報告されています。日本で初めてネグレリア・フォーレリによる感染症が報告されたのは、1996年に佐賀県で発生した事例です。この時、20代の健康な女性が感染し、発症から約10日後に亡くなりました。この事例は、国内初のネグレリア・フォーレリによる原発性アメーバ性髄膜脳炎の報告例として知られています。
その後、2010年代までは国内で確認された唯一の事例とされていましたが、近年では海外からの帰国者の感染例なども報告されています
しかし、朗報として、ネグレリア・フォーレリは塩水中では生存・繁殖できません。なので鼻洗用の生理食塩水(程度の濃さの食塩水)なら一安心。
生理食塩水なら安心…と思いきや?
生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム水溶液)であれば、ネグレリア・フォーレリが生存できないと聞いて、まずは一安心しました。
生理食塩水は、水1リットルに対して食塩9グラムの割合で、簡単に自作できます。ただし、使用する水は沸騰させてから冷ました水(湯冷まし)、蒸留水、または滅菌水であることが重要です。日本の水道水は比較的安全と言われていますが、リスクを完全に排除するためには、そのまま使用することは避けるべきです。そして、塩はミネラルなどが添加されていない精製されたものを選びます。
これで安全に鼻うがいができる!そう思っていたのですが、Geminiさんから**「作り置きはだめよ」**と優しくも厳しいアドバイスが。
作り置きの落とし穴:ネグレリア・フォーレリ以外の危険
紫外線殺菌水も作れるので、ある程度まとめて作っておきたいと考えていたのですが、作り置きには落とし穴があったのです。
紫外線殺菌は微生物を不活化する効果がありますが、完全に無菌状態にするわけではありません。時間が経つにつれて、空気中の雑菌などが再び水に混入し、繁殖する可能性があるのです。
そして、問題はネグレリア・フォーレリだけではありません。
作り置きした生理食塩水を使用することで、鼻の粘膜に細菌を付着させてしまい、かえって感染症を引き起こす危険性があります。過去には、不潔な洗浄用具や作り置きした洗浄液が原因で、アメーバ性脳炎などの重篤な感染症が発生した例も報告されています。
他にも、人間に脳炎を引き起こすアメーバが存在するそうです。
もう一つの脅威:肉芽腫性アメーバ性脳炎 (GAE)
ネグレリア・フォーレリによるPAMは「原発性アメーバ性髄膜脳炎」と呼ばれますが、他のアメーバによって引き起こされる脳の感染症は、一般的に**肉芽腫性アメーバ性脳炎(GAE)**として知られています。
GAEの主な原因となるアメーバは以下の2種類です。
- アカントアメーバ (Acanthamoeba spp.): 土壌や淡水に広く生息。免疫力が低下している人に発症しやすいですが、健康な人にも感染します。鼻、口、または傷口から侵入し、脳炎の他に、重篤な角膜炎(アカントアメーバ角膜炎)も引き起こします。
- バラムチア・マンドリルリス (Balamuthia mandrillaris): 主に土壌に生息。アカントアメーバによるGAEと症状は似ていますが、診断・治療がより困難な場合が多いです。免疫力に関わらず感染する可能性があります。日本でも近年報告が増加傾向にあります。
PAMが急激に進行するのに対し、GAEは比較的緩やかに(数週間から数ヶ月かけて)進行します。しかし、どちらも致死率が非常に高い危険な病気であることに変わりはありません。
PAMとGAEの比較
作り置きの生理食塩水もどきの安全性
このように、アメーバ性脳炎を引き起こすアメーバは複数存在し、中には土壌など身近な環境にいるものもいます。自作の生理食塩水は、たとえ正確な濃度で作っても、作り置きすることで雑菌が繁殖するリスクが高まります。特に、鼻の粘膜はデリケートなので、わずかな細菌の繁殖でも刺激や感染のリスクを高める可能性があります。過去には、不潔な洗浄用具や作り置きの洗浄液が原因で、アメーバ性脳炎が発生した事例も報告されています。
コストをかけても市販品がおすすめ
こうしたリスクを考えると、コストはかかりますが、市販の鼻うがい用洗浄液を利用するのが最も安全な選択と言えるでしょう。
市販の洗浄液は、
- 正確な濃度に調整されている
- 滅菌された水を使用している
- 防腐剤(保存料)が含まれていて雑菌の繁殖が一定期間抑えられる(無添加製品もあります)
- 使いやすい専用ボトルや器具が付属している
- 使い切りタイプもあり、より衛生的
などのメリットがあります。
もちろん、市販品を使用する場合でも、製品ごとの使用期限(開封後)や用法・用量をしっかり守り、清潔に取り扱うことが大切です。
アメーバ性脳炎は非常に稀な病気ですが、発症すると命に関わる危険な感染症です。「念のため」の対策を怠らず、安全に鼻のケアを行いましょう。少しのコストは掛かりますが、市販の鼻洗い液を買うことにします。アメーバ性脳炎で死にたくないですからね。
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